売る人・買う人の立場別に見る適用法令:個人・事業者・買取業者

同じ品物の売買でも、売る人と買う人が個人か事業者か、どこで契約したかで、働く条文が変わります。四つの組合せの見取り図と、分かれ目になる判断を整理します。

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仕入れて繰り返し売る個人は、個人どうしの取引のつもりでも、事業者として消費者契約法の規制を受ける余地があります。

このページの要点

  • 消費者契約法は消費者と事業者の契約に働き、事業として売る個人は事業者にあたり得る(2条)。
  • 事業者がインターネット等で売るなら、通信販売の表示と、返品特約の表示方法が問題になる(特商法11条・15条の3)。
  • 自宅に来た買取業者に売る取引は訪問購入。書面の受領日から8日間は撤回でき、その間は引渡しを拒める(58条の14・58条の15)。
  • 事業者どうしの売買には、商法526条の検査と通知の特則が働く場合がある。

結論:同じ品物の売買でも、売る人と買う人の立場で、働く条文が変わる

中古のカメラを売るとき、「個人どうしの取引だから民法だけ」と考える人が多いと思います。それは半分正しく、半分は条件つきです。同じカメラでも、売る人が個人で買う人も個人なら民法が中心になりますが、売る人が事業として売っていれば消費者契約法が加わり、買う側が自宅に来た買取業者に売るなら訪問購入の規制が加わります。法令が変わる分かれ目は、品物ではなく、取引の当事者が個人か事業者か、どこで契約したかにあります。

結論を先に整理します。確かめる順序は三つです。第一に、売る側と買う側のそれぞれが「消費者」か「事業者」か。消費者契約法は、消費者と事業者の間で結ばれる契約に働きます(消費者契約法2条3項)。第二に、売る側が事業者で、郵便やインターネットなどで申込みを受けているか。それなら特定商取引法の通信販売の規律の入口に立ちます(特定商取引法2条2項)。第三に、買う側が物品の購入を業とする者で、自宅など営業所以外の場所で買い取るか。それなら訪問購入です(同法58条の4)。

  • 個人と個人の売買は、民法が中心。消費者契約法は、どちらも事業者でないので働かない。
  • 事業者が個人に売る売買は、民法に加えて消費者契約法が働く。免責の特約や違約金の定めに、無効になる部分が出てくる。
  • 事業者がインターネットなどで申込みを受けて売るなら、特定商取引法の通信販売の表示義務と返品の規律が加わる。
  • 個人が自宅で買取業者に売るなら、訪問購入として、勧誘の規制とクーリング・オフが働き得る。
  • 事業者どうしの売買は、民法や商法の範囲。商人間の売買には検査と通知の特則がある。

このページは、個々の条文の中身を繰り返さず、立場による分岐と見取り図を示します。契約不適合責任の条文の構造は中古品の不適合、「ノークレーム・ノーリターン」の表示の効力はノークレームのページでそれぞれ詳しく扱っています。

最初の関門:「消費者」と「事業者」はどう区別されるのか

消費者契約法は、「消費者」と「事業者」を次のように定めています。消費者とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)をいいます(同法2条1項)。事業者とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいいます(同条2項)。消費者契約とは、消費者と事業者との間で締結される契約です(同条3項)。

ここで押さえたいのは、「個人=消費者」とは限らないことです。個人でも、事業として、あるいは事業のために契約の当事者となる場合は事業者になります。一方、法人は常に事業者側です。したがって、売る人が個人であっても、同種の取引を繰り返し行って利益を得ていれば、事業として売っていると評価される余地があります。

どこから「事業として」にあたるのかは、条文に数字で書かれているわけではありません。取引の回数、仕入れの有無、利益を得る意図、継続性などを総合して判断する整理が一般的で、具体的な目安は消費者庁の解説資料などで確認が必要です。出品の頻度が少ない一回限りの不用品の売却と、安く仕入れて繰り返し転売することを日常にしている場合とでは、同じ個人でも立場が違います。

自分が「事業者」にあたるかを考えるときの問いと理由

  1. 問いその品物は、自分が使っていたものか、売るために仕入れたものか。

    理由自用品を手放すのと、仕入れて売るのとでは、事業としての性格が違う。

  2. 問い同じような取引を、繰り返し、継続して行っているか。

    理由反復・継続は、事業性を示す事情として扱われやすい。

  3. 問い売上を得る目的で、定期的に出品しているか。

    理由利益を得る意図が、事業として行っているかの判断材料になる。

  4. 問い屋号、店舗名、事業用の口座など、事業の形を整えているか。

    理由外から見て事業と分かる形になっていると、事業者と評価されやすい。

最終的な判断は取引の実態によります。条文だけでは線を引けないため、迷う場合は事業者の立場で書面を整えておくと、後の齟齬が少なくなります。

四つの組合せを一覧にする:個人と個人、事業者と個人、個人と買取業者、事業者どうし

次の表は、売る人と買う人の組合せごとに、中心になる法令と注意点を並べたものです。条文の中身はそれぞれのページに譲り、ここでは「どの法令が顔を出すか」の見取り図として使ってください。

立場別に見る、中心になる法令と注意点

売る人と買う人中心になる法令注意点詳しく扱うページ
個人が個人に売る民法(売買は555条、契約不適合は562条以下)消費者契約法は働かない。責任を負わない旨の特約は書けるが、知りながら告げなかった事実は免れない(572条)中古品の不適合、ノークレーム
事業者が個人に売る民法に加えて消費者契約法(8条・9条・10条)。インターネット等の申込みなら特定商取引法の通信販売(2条2項・11条・15条の3)責任を全部免除する条項や、平均的な損害を超える違約金は、その部分が無効になり得るノークレーム、手付・取り置き、分割払い
個人が買取業者に売る(自宅など営業所以外で)特定商取引法の訪問購入(58条の4から58条の15)、古物営業法勧誘の規制、書面の交付、8日間のクーリング・オフがある。店舗へ自分で持ち込む場合は、別の整理になる本ページの訪問購入の項
事業者どうしで売る民法、商法(商人間の売買は526条など)検査と通知の特則があり、不適合は直ちに通知が必要になる場合がある本ページの事業者どうしの項。取引基本契約は別のガイドで扱う

この表の使い方は、自分の立場と相手の立場を当てはめて、顔を出す法令に印をつけることです。次の節から、組合せごとに、何がどう変わるのかを具体的に説明します。

個人と個人の売買:民法が中心で、消費者契約法は働かない

個人が不用品として手放す売買は、民法の売買の規定が中心です。売買は、一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することで成立します(民法555条)。成立に書面は要りませんが、書面を残す価値があるのは、高額、後日の引渡し、分割払いなどの場面です。

消費者契約法は、消費者と事業者の契約に働く法律です(同法2条3項)。個人どうしの売買は、どちらも事業者でないため、この法律の無効規定は直接は働きません。したがって、品物の不具合について責任を負わない旨の特約は、原則として当事者の合意で定められます。ただし、民法572条は、売主が担保責任を負わない旨の特約をしたときでも、知りながら告げなかった事実などについては責任を免れないと定めています。免責が書ける範囲と、免れない範囲の線引きは、前掲の中古品の不適合のページに詳しく書いています。

個人どうしの売買で、売る側が気をつけたいのは、自分が「事業者」と評価される事情がないかどうかです。仕入れて売る、継続して出品して収益を得るといった形があれば、事業者として消費者契約法の規制を受け得ます。この境目で迷う場合、書面は、事業者に求められる水準でそろえておく方が安全です。

書き方の例(一般的な例) 個人間の売買の書き方で、立場の確認をどう入れるか

当事者の立場

よくある書き方契約書に氏名と住所だけを書き、個人か事業者かを書かない。
整えた書き方買主・売主が、個人(事業としてではない)か事業者かを、当事者欄の近くに書いて確認する。

理由立場が明記されていれば、後日の争いで適用法令の前提を示す資料になる。

責任を負わない旨の特約

よくある書き方「ノークレーム・ノーリターン」の一語で終える。
整えた書き方不具合の責任の範囲を、売主が知っている不具合は告げるという前提つきで書く。

理由知りながら告げなかった事実は、特約があっても免れない(民法572条)。

事業性の自覚

よくある書き方仕入れて売るのに、個人どうしの取引のつもりで進める。
整えた書き方事業として売っているなら、消費者契約法を踏まえた条項と表示に整える。

理由買主が消費者なら、事業者の側の免責条項は無効になる部分が出る。

事業者が個人に売る:消費者契約法と通信販売の表示が加わる

売る側が事業者で、買う側が消費者であれば、その契約は消費者契約になります(消費者契約法2条3項)。ここで効いてくるのが、事業者の損害賠償責任を免除する条項の制限(同法8条)、違約金や遅延損害金の制限(同法9条)、消費者の利益を一方的に害する条項の無効(同法10条)です。

8条1項1号は、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項を無効としています。2号は、故意または重大な過失によるものについて、責任の一部を免除する条項を無効としています。ただし、同条2項には、有償契約で引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合に、事業者が履行の追完や代金の減額をする責任を負うこととされているときなどは、1項の規定を適用しないという例外があります。条文の組合せが複雑なので、具体的な条項の書き方と判断はノークレームのページに譲ります。

9条は、2種類の定めを制限します。1号は、契約の解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金で、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とします。2号は、消費者が支払期日までに金銭を支払わない場合の損害賠償の予定や違約金で、年14.6パーセントの割合で計算した額を超える部分を無効とします。手付・取り置きのキャンセル料の扱いは手付・取り置き、分割払いの遅延損害金は分割払いで扱っています。

事業者が個人に売る場合に顔を出す条文メモ

消費者契約法2条1項〜3項

定義

消費者は個人(事業としてまたは事業のためにする場合を除く)。事業者は法人その他の団体、および事業としてまたは事業のためにする個人。

消費者契約法8条

責任を免除する条項

事業者の損害賠償責任を全部免除する条項などは無効。目的物の不適合に関しては2項に例外がある。

消費者契約法9条1号・2号

違約金・遅延損害金

平均的な損害を超える違約金の部分、年14.6パーセントを超える遅延損害金の部分は無効。

消費者契約法10条

一方的に害する条項

民法などの任意規定より消費者の権利を制限し義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効。

特定商取引法2条2項

通信販売の定義

販売業者が郵便等で申込みを受けて行う販売であって、電話勧誘販売に該当しないもの。

特定商取引法11条

通信販売の広告表示

販売価格、支払の時期と方法、引渡時期、申込みの撤回・解除に関する事項などを広告に表示する。

特定商取引法15条の3

通信販売の返品

商品の引渡しを受けた日から8日を経過するまで申込みの撤回等ができる。広告に特約を表示していればこの限りでない。

条文の言い換えです。事業者が個人に売る場合の条項の整え方は、各ページで扱っています。

通信販売の部分を補足します。特定商取引法の通信販売とは、販売業者が郵便等で売買契約の申込みを受けて行う販売であって、電話勧誘販売に該当しないものです(同法2条2項)。この規律は、販売を業として行う「販売業者」を対象にしており、継続的に収益を得る意図で繰り返し販売する個人は、販売業者と評価される余地があります。判断の分かれる場面は、事業者かどうかの判断と同じ考え方になります。

通信販売をする場合、広告には、販売価格、送料、支払の時期と方法、引渡時期、申込みの撤回または解除に関する事項などを表示する必要があります(同法11条)。さらに、通信販売には、法定のクーリング・オフはありませんが、商品の引渡しを受けた日から8日を経過するまでは、申込みの撤回または売買契約の解除ができるという規定があります。ただし、広告に返品に関する特約を表示していれば、この規定は適用されません(同法15条の3第1項)。つまり、返品を断る場合は、広告にその特約を明確に書いておく必要があります。

返品特約の表示の具体的な方法は、省令で定められています。表示の位置、文字の大きさなど、何をどう書けば特約として有効になるのかは、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。「ノーリターン」と書けば足りるのではなく、規定された方法で表示されていなければ、特約と認められない場合があります。

個人が買取業者に売る:訪問購入の規制と、古物営業法の入口

自宅に来た買取業者に品物を売る取引は、特定商取引法の「訪問購入」にあたり得ます。訪問購入とは、物品の購入を業として営む者(購入業者)が、営業所等以外の場所で、売買契約の申込みを受け、または売買契約を締結して行う物品の購入です(同法58条の4)。売る側の個人は、この取引の「相手方」として保護の対象になります。

定義の中に「営業所等以外の場所」とあるとおり、買取店に自分で品物を持ち込んで売る場合は、この訪問購入の定義とは別の整理になります。適用除外となる物品の範囲も、政令で定められています。したがって、自宅に来てもらった買取か、店に持ち込んだ買取か、という取引の場所が分かれ目になります。

訪問購入では、購入業者に、次のような義務が課されます。勧誘に先立って、業者の氏名・名称、勧誘の目的である旨、勧誘に係る物品の種類を明らかにすること(同法58条の5)。勧誘の要請をしていない者に対して、営業所等以外の場所で勧誘したり、勧誘を受ける意思の有無を確認したりしてはならないこと(同法58条の6第1項)。勧誘を受ける意思があることを確認せずに勧誘してはならないこと(同条2項)。契約を締結しない旨の意思を表示した者に勧誘してはならないこと(同条3項)。

さらに、申込みや契約の際に書面を交付すべきこと(同法58条の7・58条の8)、不実のことを告げる行為や威迫して困惑させる行為の禁止(同法58条の10)があります。そして、売る側に与えられる重要な権利が、書面または電磁的記録による申込みの撤回または契約の解除(クーリング・オフ)です。法定の書面を受領した日から起算して8日を経過するまでは、この撤回等ができます(同法58条の14第1項)。撤回等があった場合、購入業者は損害賠償や違約金を請求できず(同条4項)、これに反する売る側に不利な特約は無効です(同条6項)。

クーリング・オフの期間中は、引渡しの期日の定めがあるときでも、売る側は購入業者に対して物品の引渡しを拒むことができます(同法58条の15)。「いったん渡してしまう前に、立ち止まる余地が法律で用意されている」という点が、訪問購入の特徴です。

個人が自宅で買取業者に売る場合の流れ(概要)

  1. 勧誘の前購入業者が氏名・名称、勧誘の目的、物品の種類を明らかにする(58条の5)
  2. 申込み・契約購入業者が法定の事項を記載した書面を交付する(58条の7・58条の8)
  3. 8日間書面を受領した日から8日を経過するまで、書面等で撤回・解除ができる(58条の14)
  4. 期間中の引渡し売る側は、引渡しの期日があっても、物品の引渡しを拒める(58条の15)
  5. 撤回があったとき購入業者は損害賠償や違約金を請求できない(58条の14第4項)

概要の説明です。具体的な書面の記載事項や、適用除外の物品は、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。

古物営業法との関係も、入口だけ整理します。古物営業法は、古物の売買等を業として営む者に許可を求める法律です(古物営業法3条)。同法2条2項1号は、古物営業を「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」と定めています。

この条文を読むと、古物を売却することだけを行うもの、つまり自分の物を売るだけの行為は、古物営業から除かれていることが分かります。個人が自分の使っていた物を一度売る行為と、古物を買い取って売ることを業とする行為とでは、法律上の扱いが分かれます。許可の手続の詳細は、このガイドでは扱いません。個人の自用品の売却がどこまで許可の対象外とされるのか、具体的な運用は、所管官庁の公表資料で確認が必要です。

事業者どうしの売買:民法に加え、商人間の特則が働く場合がある

売る側も買う側も事業者であれば、消費者契約法は働きません。民法の売買の規定が基本で、さらに商法の特則が加わる場合があります。商法526条は、商人間の売買で、買主は目的物を受領したときは遅滞なく検査をしなければならず、種類・品質・数量に関する不適合を発見したときは直ちに売主に通知をしなければ、追完・減額・損害賠償・解除ができなくなる、と定めています(同条1項・2項)。直ちに発見できない不適合は、買主が6か月以内に発見したときも同様です。売主が不適合について悪意であったときは、この規定は適用されません(同条3項)。

民法566条は、不適合を知った時から1年以内に通知すればよいと定めていますから、商人間の売買では、通知の期間が民法の原則より厳しくなる場合があるわけです。この違いを知らずに「1年あるから」と放置すると、権利を失うおそれがあります。

事業者どうしの継続的な取引では、個々の売買の都度ではなく、取引基本契約で条件を定めることが多くなります。検収の方法、不適合の通知期間、代金の支払条件などを基本契約に書く設計は、別のガイドで扱っています。このガイドは個人間・中古品・高額品の売買が主題ですから、事業者どうしの売買は、立場による分岐を示すにとどめます。

立場によって適用法令が変わることを知らないまま取引すると、後から条項が使えなかった、表示が足りなかった、という食い違いが生じます。典型的な場面を、防ぐ書き方とあわせて整理します。

立場の取り違えと、書面で防ぐ書き方

事業として出品しているのに、個人どうしの取引のつもり

起きがちなこと買主が消費者であれば、責任を全部免除する条項などが無効になる部分が出る。

防ぐ書き方事業として売っているなら、消費者契約法を踏まえた免責の範囲と、通信販売の表示に整える。

自宅に来た買取業者に、その場で売る約束をした

起きがちなこと書面を受け取ったあとでも、8日間は撤回・解除できることを知らずに諦める。

防ぐ書き方受け取った書面の内容と受領日を確認し、期間内の撤回の可否を落ち着いて検討する。

「返品不可」と書けば足りると思って表示した

起きがちなこと返品特約の表示が、規定された方法を満たさず、特約として認められないおそれがある。

防ぐ書き方通信販売の広告に、返品に関する特約を、省令の定める方法で表示する(特定商取引法11条・15条の3)。

事業者どうしの売買で、民法の1年の通知で足りると考えた

起きがちなこと商人間の売買では、検査と直ちに通知の義務があり、権利を失う場合がある。

防ぐ書き方検査と通知の期間を、契約書または取引基本契約に具体的に定め、運用で守る。

立場と取引の場所は、取引の前に整理しておくと、後から条文を探す手間が減ります。

起きがちなこと:立場の取り違えと、判断を誤ったまま進めた取引

起きがちなこと

  • 安く仕入れて繰り返し出品しているのに、個人の不用品の処分だと思い込み、事業者としての表示や免責の整理をしないまま売ってしまう。
  • 個人どうしの売買の書式を、そのまま事業者として消費者に売る場面で使い、無効になる条項を含んだ契約書になる。
  • 「ノーリターン」とだけ書いて、通信販売の返品特約として必要な表示の方法を満たしていない。
  • 自宅に来た業者に品物を売ったあと、書面を受け取って8日以内なら撤回できることを知らないまま、期間を過ぎてしまう。
  • 事業者どうしの売買で、民法の通知期間の1年があると思い込み、商法の検査と通知の義務を見落とす。
  • 古物営業法の許可の要否を、「個人だから関係ない」と決めつけ、継続的に買い取って売る形になっていることに気づかない。

自分の立場を整理するチェックリスト

  • 売る側は、個人か事業者か。事業として、または事業のために売っていないか。
  • 買う側は、個人か事業者か。個人でも、事業のために買っていないか。
  • 契約は、インターネットや郵便等で申込みを受けたものか。対面や持込みか。
  • 買取の取引なら、自宅など営業所以外の場所で行われたか。
  • 返品を断るなら、広告に特約を規定された方法で表示したか。
  • 事業者どうしなら、検査と通知の期間を契約書に具体的に書いたか。

立場の判断が済んだら、あとは各ページに戻って、条項の組み立てを確認します。契約書の全体の骨格は全体像と書面のページ、トラブルになったときの確認の順序はトラブルと質問のページにまとめています。

よくあるご質問

個人どうしの売買にも、消費者契約法は適用されますか。

消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される契約に働きます(同法2条3項)。個人どうしの売買は、どちらも事業者ではないため、この法律の無効規定は直接は働きません。ただし、売る側の個人が、事業として、または事業のために売っているなら、その個人は事業者にあたります(同条2項)。仕入れて繰り返し売るなど、事業の性格がある場合は、消費者契約法の適用を前提に書面と表示を整えるのが安全です。

インターネットで個人が不用品を売る場合も、特定商取引法の表示が必要ですか。

特定商取引法の通信販売の規律は、販売業者が郵便等で申込みを受けて行う販売に働きます(同法2条2項)。一回限りの不用品の処分は、通常は販売業者の取引と評価されにくいと考えられますが、継続して出品して収益を得るなどの事情があれば、販売業者と評価される余地があります。どこからが販売業者にあたるかは条文に数字で書かれていないため、所管官庁の資料で確認が必要です。

通信販売で「返品不可」と書けば、返品を断れますか。

通信販売には法定のクーリング・オフはありませんが、商品の引渡しを受けた日から8日を経過するまでは申込みの撤回等ができる規定があります。ただし、広告に返品に関する特約を表示していれば、この限りではありません(特定商取引法15条の3第1項)。特約として認められるには、省令で定める方法で表示されている必要があります。表示の具体的な方法は、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。

自宅に来た買取業者に品物を売りました。やめたくなったらどうなりますか。

購入業者が営業所等以外の場所で行う物品の購入は、訪問購入にあたり得ます(特定商取引法58条の4)。売る側は、法定の書面を受領した日から起算して8日を経過するまでは、書面または電磁的記録により申込みの撤回または契約の解除ができます(同法58条の14第1項)。この期間中は、引渡しの期日の定めがあっても、物品の引渡しを拒むことができます(同法58条の15)。対象外の物品もあるため、個別の取引は条文と所管官庁の資料で確認が必要です。

事業者どうしの売買でも、民法の1年の通知期間が使えますか。

事業者どうしの売買で、売主と買主が商人である場合は、商法526条の特則が働きます。買主は目的物を受領したら遅滞なく検査し、不適合を発見したときは直ちに売主に通知しなければ、追完・減額・損害賠償・解除ができなくなります。直ちに発見できない不適合は、6か月以内に発見したときも同様です(同条2項)。売主が不適合について悪意であったときは適用されません(同条3項)。民法566条の1年の通知期間より、厳しくなる場合があります。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、品物の状態、当事者が個人か事業者か、やり取りの経過によって結論が変わることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。確認できなかった点は、条文と所管官庁の資料で確認が必要としています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 警察庁 / 国民生活センター

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